キーチ

2008年6月30日 読書
キーチ
最初に青年編である「キーチVS」を読み、「MONSTER」や「キマイラ」を思い出した、が。
が、なによりエネルギーが違った。
ページと読者間に緩衝材がいっさいない!というのは間違いだ。
あくまで主人公視点において言いきれるのだ。

我がまま→自由。主人公は動く。
現代社会かは知らないが、そういう世という在り方に相反し続けていく形になる主人公に人は惹かれていく。もっとも、その構図自体が滑稽に見えるものだが、はてさて。

幼稚園に通う3歳から、小学5年まで続く物語。

一番好きなシーンが冒頭にある父親の祝言なのだけれど。

Not simple

2008年4月7日 読書
イアンは彼で。彼はツキに見放されて。そんな単なる物語。
時間軸の構成と、この絵で成り立つ部分も多い。
彼はただ殺風景で、居て。
寄ってもらえはしたものの、彼からの再びなんてものは。
彼には再びなんて、ガムくらいのものしかなかった。

エピローグ。姉の、母の。
たとえば、流氷の上で死んだ生き物になる前に人は。
景色の奥しかなかっただろうとか。

最後を読んで。やりきるしかない。仕方ないわけも。

フリージア

2006年11月5日 読書
世界感やノリの話しは置いておく。
それは荒廃。不和。などだ。

自閉症とも見受けられる症状を持っている主人公、叶ヒロシ。
物語が進むたびに、彼から純粋さというものを感じる。改めて感じる。
どうしようもない世界、その不条理と混じりながらも暮らしてく様。
暗闇が増すために光の存在がわかるという。あれ。

自分と、自分の関係はなんだ。

ベルセルク 6巻

2006年10月20日 読書
子供達。その遊びの中。
隠れんぼ、鬼ごっこ、缶蹴り…。いつだって自分はその勝利者という英雄に憧れ、戦い、多くを勝ってきた。
それらの戦いは本当に勝ちたかったから。

「誰のためでもない。自分が…自分自身のために成す。夢です。」
(略)
「生まれてしまったから、しかたなくただ生きる。そんな生き方、オレには耐えられない」
(略)
――自分を信じてくれた者の死骸を積上げても、それを道に塔を目指し、冷然と――
「オレは。オレの夢を裏切らない。それだけだ」

野心。
さようなら、3(スリー)フリッパーのスペースシップ。さようなら、ジェイズ・バー。双子の姉妹との〈僕〉の日々。女の温くもりに沈む〈鼠〉の渇き。やがて来る1つの季節の終わり――『風の歌を聴け』で爽やかに80年代の文学を拓いた旗手が、ほろ苦い青春を描く3部作のうち、大いなる予感に満ちた待望の第2弾。
改めてレビューするには問題のある作品。
過去にも取りあげて書いたけれども。
受信する側の感性によるものが際立つ。
だから感覚小説と名指したい。
息をつく光景。氷の溶ける音だけ。夜汽車。懐かしい空気。
なんだかんだで方向はあって、停まることはできない。

自分はにわかピンボーラーになることがある。
睡眠薬、シャブ、アヘン、幻覚サボテン、咳止めシロップ、毒キノコ、有機溶剤、ハシシュ、大麻やLSDもあれば、アルコールもある。ドラッグのオンパレードである。著者自らが体験したリーガルなものもあるし、話に聞いただけのイリーガル・ドラッグもある。古今の作家の生活や名著などもひきながら、話は「人はなぜ快楽を求めるのだろうか」へと進む。煙の向こうにひとの本質が見え隠れするような傑作ドラッグ・エッセイ。
ひたすら中島らも氏による分析(体験談)で語られた本。
真面目なことを面白く、ふざけて読むべき本かと思う。
彼が死んだ今、もう読みながら心配しなくて済むのはこれ幸いかな。

アフターダーク

2004年9月16日 読書
村上春樹の作品は読むたびに不思議な自己啓発を。
自分はこの作品に限り、事情があって一回しか読んでいない。
当然、一回限りで読む春樹作品にも本質はあるのだろうけれど、やはりそれは満足できないものだ。物語が進行している作業を見ているだけ。

「蛍」という作品は「ノルウェイの森」に入ってしまった。
「アフターダーク」、これはこれで良いかと。
なんとなく近年の集大成という印象を受けた。

羊のうた (第7巻)

2004年8月31日 読書
発作的に理性を失い、他人の血を求めたくなる精神病を抱えた姉弟の話し。別に一般でいう吸血鬼のイメージではない。
映画「ポーラX」のように美しさと脆さ、完璧な憎悪や愛情などを抱えて破滅へと向かっていくような作品。あとがきに「当時はみんな死んで世界の終わりがくればいい」とあるように始まり、「今思えば青臭くてバカだった」と6年前の連載当時を語るだけあり、最終的には少し救いのある展開になったが・・・。

絵のタッチ、どこか寒い世界観に惹かれて読んだ漫画。

羊をめぐる冒険

2004年8月16日 読書
村上春樹。4部作のうち3作目にあたる。(風の歌を聴け→1973年のピンボール→羊をめぐる冒険→ダンスダンスダンス)
他者から見れば理性的すぎる主人公。

連続する理不尽。閉塞的な呼吸。失うではなく、欠けること。
彼の作品には「損なう」ことがついてまわる。
あからさまな喪失でない。
在ることで死んでいくような。

車輪の下

2004年7月19日 読書
ヘルマン・ヘッセ。
あまりにも透明なエーテルとでもいうべきか、そういうものを感じてしまう作品。かなり啓蒙的である。
とにかく主人公である少年→青年「ハンス」の一生。
当然それには社会という切っても切れない関係が付いてくる。

個人的に神学校のテストを受けるシーンが忘れられない。
最後、水の中に見る美しさも。なんて。

猫町

2004年7月14日 読書
 
朔太郎の作品については知らず、これ以外に読んだことがない。
猫町という物語は行動心理学に近い。
いつも見慣れた町であっても、違う角度から見る(迷い込む)と全く別の町に見えてしまうという。そこで一瞬のパニックが引き起こす幻覚。
猫の大群・・・。
なんとなく話しの底で奇妙な不快感を覚える。それが面白い。

福本伸行

2004年7月13日 読書
とりあえず漫画家。ギャンブル漫画などが有名。
作者が人間や世間に対する考え方を多く示している。

作品「カイジ」では
「金は命より重い」「勝たなければクズ」「大人は質問に答えない」
など、やや偏狭的ではあるが、ストレートにある種の事実が語れている。
勝ち組・負け組と二極化し、それぞれの視点で様ような考えを見出せる。
スイートな漫画でないことは確かである。

中原中也詩集

2004年6月28日 読書
中原中也、谷川俊太郎、朔太郎と言ったら近代詩人の有名どころだろう。教科書にも載っており、若者の多くが読む。
青くて、キャッチーで。大衆的とも言える。

それでも自分は中原の世界に見惚れることがある。
日本に住みながら、その目でなぜあのように詠えるのか。

書きなぐられた文字や詩人なんて、所詮は書きなぐられた文字と詩人である。それは変わらないし、否定もできない。文字と人間。乱雑に書かれたノート。酔っ払った人間。
自分の読んできた本の中でもっとも魂を揺さぶった。
読んでて発狂しそうになるほど、それは自分がジョン・レノンを殺していてもおかしくないほどに衝撃を受けた。
本。9つの物語。酷い飛散と潔白なまでの魂。

痛いレビューになるけど
この本を読むと自分が汚れていることを切実に感じる。
同時に世の中のすべての人間を慈しむ。

戦慄だの刹那だの、そういう言葉を陳腐に変える。
カポーティ(子供)の持つ無垢がそのまま描かれている作品。
傷つく脆さ、儚い思い出、切ない情。
誰もが失っていくイノセンスという感覚を思い出す。
内容以前に書き方も美しく、それは静かな衝撃にも変わる。

個人的にカポーティの作品を読んでいると、必ず雨を想像してしまう。静かにフロントガラスを流れるような雨だ。
 
アル中の日記みたいな小説。
体にガタがきて病院に入り、退院するまでが書かれている。作中には自分で調べた酒に関する知識・見解などが書かれており、いささかの勉強にもなった。

読んでいると中島らもの怠惰がひしひしと伝わり、引き込まれそうになる。しかし彼独特の透明感が光っている作品。

断酒している人間が禁を破るシーンには思わず呆然としてしまった。
欲を抑える人間なんて所詮は無理を冒しているだけなのか。

風の歌を聴け

2004年6月5日 読書
 
村上春樹の処女作。
この作品がきっかけで自分は思春期から青年期に移行できた、気がする。それだけに読む者を啓発させる本。理不尽に対する耐性がつくと思う。
内容は捉えがたい。ただ若者が酒を飲んでいるだけ、と言われればそれまでだ。そこに何か惹きつけられるのかもしれない。
雰囲気は日本という枠になく、むしろヨーロッパ辺りを連想する。

真に困ること。それは「自分を損なうこと」。

うたかたの日々

2004年5月31日 読書
 
有名なフランス作家ボリス・ヴィアンの小説を漫画化したもの。
この岡崎京子という人の絵に見覚えはあるのだが、ちゃんと見たのはこれが初めてだ。彼女については何も知らなかった。

シュールな世界観・ストーリーと絵が実にマッチしていて、原作にアレンジを加えているが違和感なくボリスの漫画として読めた。
そして物語からは説明のできない感情が湧きあがってくる。読んでいるとどこかで自分と主人公がシンクロし、とても惨めで愛しくなる。
この辺はサリンジャー著「ナイン・ストーリーズ」にある一篇「バナナフィッシュにうってつけの日」を彷彿させる。不覚にも泣いた小説は後にも先にもバナナフィッシュだけだった。

話しがずれたが「うたかたの日々」、残酷と祝福に満ちそうな美しい小説。

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